親権者、養育費

 離婚する夫婦に未成年の子がある場合は、親権者を定めなければなりません。
離婚の合意ができても、子の親権者が定まらなければ、離婚届は受理されません。
協議で親権者を定めることができなければ、調停や審判を申立て、親権者を定めることになります。  また、父母は子の生活に必要な養育費をどのように分担するかを定める必要があります。  これについても、協議が整わない場合には、調停や審判を申立て定めることになります。

親権者と監護者

 親権者とは、未成年の子について身上監護と財産管理をする者をいいます。
夫婦の場合は、共同で子の親権者となりますが、離婚した場合には、どちらか一方を親権者として定める必要があります。  離婚の際には父母の協議により親権者を定める事ができますが、親権者をどちらにするか対立がある場合には、調停や審判を申立て定めることになります。

身上監護・・・子の利益の為に子を監護・教育し、子の肉体的・精神的成長を見守ることです。
法的には、未成年の子が一人前となるように保護・監督し、教育を受けさせる「監護教育権」、子を住まわせる場所を指定する「居所指定権」、子のしつけを行う「懲戒権」、職業を行うことを許可したりする「職業許可権」などがあります。

財産管理・・・未成年者には財産を管理する能力が不十分で、法律行為を単独ではできないため、未成年者がする法律行為に同意する権利や財産に関する行為の代理権などにより子の財産を管理します。

親権者を定める場合の考慮する点・・・婚姻を破綻させた責任のある側が、必ずしも不適格とはいえず、子の福祉の観点から以下を総合的に考慮して親権者を定める必要があります。  なお、調停・審判では子の監護状況が重視され、9割程度母親が親権者となります。
① 親権者となる者の経済力、健康状態、気質・性格・・・子の生活の安定性の確保
② 監護の継続性や養育能力・・・子に対する愛情や監護する意思、監護体制
③ 身上監護上の環境の継続性・・・子の友人や通学、住環境を考慮する必要があります。
④ 子の年齢、心身状況・・・子が幼い場合には母親が親権者となる方がよいでしょう。
⑤ 親子関係や子の意思・・・ある程度の年齢の子はその意思を聴く必要があります。

親権者と監護者・・・一方を親権者と定めた場合でも、「親権」から子の心身の成長を見守る「身上監護」を分離して、他方を監護者として分けることもできます。  親権者について当事者間に対立がある場合やどちらか一方を親権者として決めづらいような場合には、親権と監護権を分離して解決を図る方が、子の福祉や利益にかなうことがあります。   ただし、基本的には以下の理由により親権者と監護者を一致させる方がよいと思います。
○ 学校の入学時の手続などの諸手続は親権者です。
○ 給与の子供に対する扶養手当の支給先は親権者となります。
○ 子の病気や事故による手術をする場合の同意書の同意権者は親権者となります。
○ その他、事故などにあった場合の損害賠償請求権は親権者です。

親権者、監護者の変更

 離婚の際には父母の協議により親権者を定める事ができますが、一旦定めた親権者の変更は、父母の協議のみにより変更することはできず、家庭裁判所の調停や審判手続きを経なければなりません。 既に子と親権者の関係が継続しているので、親権者の変更を必要とする特別の事情がなければ認められないと思われます。 なお、15歳以上の子については、親権者を指定・変更する場合の審判においては、子の意見を聞く必要があり、子の福祉や利益を考慮し、どちらが適当かを判断されますので、親の都合で変更される事はありません。 一方、親権者とは別に監護者を定めた場合には、監護者の変更は当事者の協議により変更する事ができます。

親権者が死亡した場合・・・親権者となっている一方の親が死亡した場合は、自動的に生存している他方の親が親権者となるわけではありません。 生存している親が家庭裁判所へ親権者変更の申立をして、親権者としての適格性が認められれば親権者の変更がなされます。 適格性を否定されれば、後見人が選任されます。

親権者となっている親が再婚した場合の親権者変更・・・親権者となっている親が再婚し、再婚相手が子と養子縁組をした場合には、親権者変更の申立はできません。

面接交渉(民法766条 離婚後の子の監護に関する事項の定め等)

面接交渉とは・・・子の監護者とならなかった親が、一時的に子との交流をもつことを「面接交渉」といいます。 平成24年4月施行の改正民法では、協議離婚において、子との面接や交流について定めることが明記されました。 さらに、この協議が整わないときは家庭裁判所が定めることとなっています。 また、家庭裁判所は、これについて子の監護上必要性がある場合には、相当な処分を命じることができます。 面接交渉は一般には月1回~2回程度が多いようですが、この数字にこだわる必要はありません。

面接交渉権・・・民法に子との面接や交流について協議で定めると明記されていますので、監護者とならなかった親は面接交渉権がありますが、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と条文に明記されていますので、子の福祉に反しない限り面接交渉の権利があると考えられます。 この権利は、子との交流を図ることは親として自然のことであると同時に、両親の愛情を受けて成長することは、子の権利でもあるという側面があります。 よって、面接交渉する側・面接交渉に応じる側双方は、面接交渉を親の都合で考えるのではなく、子の為に面接交渉があるという姿勢で臨む必要があります。

面接交渉が認められない場合・・・面接交渉が子の福祉を著しく害するようなことになったり、子の精神状態が不安定になったりするような場合には、面接交渉が認められないことがあります。  家庭裁判所の判断においては、子の意思も尊重され、満15歳以上の子との面接交渉について判断する場合には、子の意思を聴くことになっています。  子が低年齢の場合には、家庭訪問や子との面談により子の意思を把握することになります。

親権者となった者が再婚する場合・・・子にとって養育環境が変わり、新たな父又は母となった者が親としての養育を望んだり、新たな家族としての養育環境を望んだりするような場合があります。 子と再婚相手が養子縁組みをした場合には、再婚相手も法律上の親(養親)であり親権者となりますので、再婚相手の意思や子の意思の変化などを含めて、今までの面接交渉を見直す必要があります。 基本的には話し合いにより決めていきますが、協議が整わない場合には、調停を申し立てることになります。
面接交渉について取り決める際、「再婚するまで」と定めているような場合は、そのことによって子の意思や子の福祉を害してしまうことにならない限り、再婚により面接交渉を拒否することができるものと考えられます。

養育費

 親は子に対して自分と同程度の生活ができるようにする生活保持義務を負い、未成熟な子にかかる費用を父母が分担します。   養育費の分担は、夫婦の収入の差や子の年齢によって定まり、養育費を請求する側は「権利者」、請求を受ける側は「義務者」となります。 養育費は、父母が離婚する場合には、協議においてその分担を決めることになりますが、父母間でその協議が整わない場合には、家庭裁判所が定めることになります。

養育費とは・・・養育費は子の衣食住、教育費、医療費など子が経済的に自立するまでに要する費用をいいます。 教育費については、幼稚園・保育園、義務教育、高等学校までの教科書代、給食費、受験料、入学金、授業料など必要な諸費用を含みますが、大学・大学院、学習塾などに費用については、父母の学歴・資産・収入・生活水準により個別に判断されます。 その他習い事や自動車教習所の費用は教育費に該当しないとされています。

養育費が必要な子とは・・・養育費は子が経済的に自立するまでの費用なので、4年制大学に行っている場合、20歳を過ぎると親権はなくなりますが、経済力を持っているわけではないので、養育費が必要となります。 逆に、義務教育(中学校)を終えて就職している場合には、独立した経済力を持っているので、親権はなくなりませんが、養育費は不要となります。 よって、監護養育義務である親権の要否と養育費の必要性について関連はありません。

養育費の始期と終期・・・養育費支払いは始期と終期を定めますが、始期については親権者を定め離婚が成立したとき又は離婚後養育費支払い請求をしたときから、終期については両親の協議では18歳又は20歳までを決めることが多く、審判では通常20歳までを決めることになります。

養育費の算定

 養育費は、父母の話し合いによりどのように負担するかを決めますが、両者の収入により影響を受けますので、養育に必要な費用をすべて満たすとは限らず、父母双方が合意できる額をすり合わせることになります。  一応目安として、東京と大阪の裁判官の共同研究により作成された「養育費算定方式」や「養育費算定表」がありますが、個別の事情を加味して父母の話し合いで合意の形成を図ります。 以下が「養育費算定方式」となります。

① 総収入の把握・・・給与所得者であれば源泉徴収票の「支払金額」を、自営業者であれば確定申告書の「課税される所得金額」が「総収入」となります。 

② 基礎収入を算出・・・「総収入」から、①所得税や住民税などの公租公課、②就労するために必要な被服費・交通費・交際費などの出費、③住居に要する費用・保険医療費などの自分の意思で変更することが困難な生活様式の中で発生する必要な経費を差し引き「基礎収入」を算出します。 この「基礎収入」を家族の生活に必要な経費に相当するものとして算式に当てはめます。 上記①②③は、収入に対する割合が統計資料に基づいて推計され、給与所得者は35%~43%、自営業者は49%~54%となっており、高額所得者ほど低率の割合を用います。
給与所得者の基礎収入・・・総収入 × 35%~43%
自営業者の基礎収入 ・・・総収入 × 49%~54%
■説例・・・総収入に対する割合を38%としたとき
夫(給与所得者)の総収入が500万円の場合→500万円×38%=190万円
妻(給与所得者)の総収入が100万円の場合→100万円×38%= 38万円

③ 養育費の指数・・・養育費の指数とは、厚生労働省の告示による生活保護基準から算出した標準的な生活費の指数で、子の生活に必要な費用の割合を示したもので、以下のようになります。
15歳~19歳の子=90  0歳~14歳の子=55

④ 子の養育費の算式
子の養育費は、基礎収入を養育費の指数の組み合わせにより算出します。
子の養育費  = 義務者の基礎収入 × (子の指数の和 ÷ 義務者と子の指数の和)
■説例・・・義務者の基礎収入が190万円で、16歳と12歳の子がいる場合
子の生活費=190万円×{(90+55)÷(100+90+55)}=112万4490円

⑤ 養育費を支払う義務者が分担する養育費の額の算式
子の養育費×{義務者の基礎収入÷(義務者と権利者の基礎収入の和)}

具体的説例・・・総収入に対する割合を38%としたとき
■夫の総収入=500万円、妻の総収入=100万円、10歳、13歳、16歳の3人の子があり、妻が3人の子を養育している場合
夫の基礎収入=500万円 × 38% = 190万円
妻の基礎収入=100万円 × 38% =  38万円
子の養育費=190万円×{(90+55+55)÷(100+90+55+55)}=約126万6667円
夫(義務者)から妻(権利者)に支払われる子の養育費
=126万6667円×{190万円÷(190万円+38万円)}=約105万5556円
よって、夫は妻に対して月額 約87,963円の子の養育費の支払いが生じます。

youikuhi1
■上記の説例で、夫が16歳の子だけを養育している場合
子の養育費=190万円×{(55+55)÷(100+55+55)}=約99万5238円
夫(義務者)から妻(権利者)に支払われる子の養育費
=99万5238円×{190万円÷(190万円+38万円)}=約82万9365円
よって、夫は妻に対して月額 約69,114円の養育費の支払いが生じます。

koninhiyou2

養育費の変更

 養育費支払いは長期間に及びますので、養育費決定当時、当事者が予想できないような事情変更があり、実情に合わなくなった場合には、増額・減額・支払い不要などの変更をすることができます。 養育費決定当時に当然予想できるような事情変更による養育費の変更は認められません。
養育費変更が考慮される事情
① 養育費を受けとる者又は養育費を支払う者が再婚する。
② 再婚した場合、養育費の対象となっている子と再婚相手が養子縁組をする。
③ 再婚した養育費を支払う者に子ができた。
④ 養育費を支払う者が病気になったり、職業が変更になり収入が変化した。
⑤ 養育費支払い終期到来前に子が就職した。

養育費支払いの確保

 養育費は父母の双方が分担し合うことになりますが、子を引き取って育てている側は、他方に対してその分担分の支払いを請求することになります。 養育費は長期に渡って支払いを受ける性質上、その支払いを確保しておく必要があります。
協議離婚で「念書」などにより養育費の支払いを定めていた場合には、支払いが滞った場合には、養育費請求の調停や審判を申し立てなければなりません。 

調停離婚や審判離婚による場合には、支払いが滞ったときには、家庭裁判所に「履行勧告」や「履行命令」をしてもらい、それでも支払がなされないときは、地方裁判所の強制執行手続により相手方の給料を差し押さえるなどして強制的に取り立てることができます。 

公正証書の作成・・・協議離婚の場合には「強制執行認諾条項」を設定した公正証書を作成しておきます。 この公正証書を作成しておくと、裁判所の調停や訴訟手続によらずに強制執行が可能となり、支払いが滞ったときには給料の1/2を差し押さえることができます。

一括払いの養育費・・・通常、養育費は毎月支払う定期金として定めますが、一括で支払う場合もあります。 このような場合には、受け取った側には、養育費を計画的に使用し子を養育する義務があります。 一括で受け取った養育費を無計画に使い(たとえば、高等学校・大学へ入学させる費用が不足することを予測できるのに、公立の小中学校ではなく高額な私立の小中学校に入学させるなど)、養育費が不足するとして新たな養育費支払いを求めても、養育費を変更する事情は認められないことがあります。 このように養育費を受け取る側が不適切に管理できないおそれや浪費癖があるような場合において、一括払いで養育費を支払う場合は、信託銀行などとの間で信託契約を締結し、月々の養育費の支払いをすると良いでしょう。

このページの先頭へ戻る