慰謝料

 慰謝料とは、どちらか一方の不貞行為や暴力などの不法行為により離婚原因をつくった場合、他方に対してその精神的苦痛に対する損害賠償として認められるもので、一方に不法行為があれば当然に認められるものです。
ただし、双方に婚姻を破綻させた責任がある場合には、慰謝料は認められない場合もあります。
慰謝料は、浮気などの①直接の離婚原因である有責行為による精神的苦痛と②離婚により配偶者としての地位を失う事による精神的苦痛に分けられますが、これを区分しないで1個の不法行為として考えます。

慰謝料の算定

 慰謝料の金額については明確な基準があるわけではなく、婚姻が破綻した原因となった事実について、その違法性を評価することにより算定され、①婚姻継続年数や②別居期間、③離婚の原因となった責任の重さや④離婚に至った経緯、⑤資産状況や⑥職業・収入・社会的地位などを総合的に判断されます。

慰謝料の金額・・・東京家庭裁判所の統計によると、慰謝料を認められた約95%は500万円以下で、その内300万円以下が約80%、200万円以下が55%、100万円以下が28%です。 不法行為による精神的苦痛を受けた者が思っている程の慰謝料は認められないのではないでしょうか。 慰謝料は、もともと金銭では推し量れないような精神的損害を裁判官の判断で金銭に置き換えるものなので、慰謝料を予測することは難しいと思われます。  また、もともと精神的苦痛を金銭に置き換えるということには無理があることから、慰謝料については低額とし、財産分与について慰謝料的要素を考慮したり、財産分与に慰謝料分を反映させる方法がとられたりします。

離婚原因が財産分与する側にある場合・・・不貞行為などの離婚原因が、財産分与をする側にあり、慰謝料支払いが命じられた場合には、離婚原因に至った責任を問うことができないような場合に比べて、財産分与+慰謝料支払いとなりますので、ある程度高額になります。

離婚原因が財産分与を受ける側にある場合・・・不貞行為などの離婚原因が、財産分与を受ける側にあるような場合には、不貞行為などの精神的苦痛に対する損害賠償が相殺されますので、相当程度減額されます。   慰謝料請求額=財産分与額の場合には、財産分与は発生しないことになります。

慰謝料発生の原因となる不法行為等期間の財産分与・・・財産分与は夫婦が共同生活により協力し合って形成した財産を、離婚により清算するものですから、離婚原因となった不貞行為などの期間については、財産分与の対象となる財産形成期間から除外されると考えられますので、財産分与はその期間について減額されます。 ただし、不法行為について慰謝料が認められる場合があります。

慰謝料が認められる不法行為

不貞行為・・・離婚事由の「配偶者に不貞行為があったとき」に該当する貞操義務違犯はある程度高額になると思われます。 家庭を省みず不貞行為を重ねたり、不貞行為と同時に配偶者の同居・協力・扶助義務違犯や暴力などの複数の不法行為が認められれば、慰謝料も高額になります。

暴言・暴力行為・・・人格を無視した発言や暴言・行動、暴行については、慰謝料が認められる場合があります。 さらに、障害を負うような暴力について就労に支障をきたした場合などは就労により得られるはずの収入が得られなかった逸失利益も認められ、ある程度高額になる場合があります。

同居・協力義務違反・・・夫婦は同居し協力して相互扶助しなければならないとされています。 一方的に家を出て行ったり、生活費を渡さず生活が困窮するような場合の精神的苦痛に対する慰謝料の請求が認められる場合があります。

性交拒否・性的不能・・・婚姻中一度も性交がないなど極端な性交拒否の場合にはある程度高額になります。 夫婦は精神的・性的・経済的結合体であり、婚姻は子孫の育成を目的とするという側面があることから、性交拒否は離婚事由の「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たるという最高裁判決もあります。

慰謝料が認められない場合

有責行為の証拠の有無・違法性の程度・・・有責行為の証拠が認められないようなものであったり、有責行為が軽度で慰謝料支払には及ばないものや違法性がないような場合には、慰謝料は認められません。 また、不貞行為などにおいて、不貞の相手方から十分な慰謝料を受け取っているような場合にも、有責配偶者からの慰謝料は認められない事があります。

婚姻継続努力と婚姻関係破綻・・・不法行為を受けた側は、婚姻を継続しようとする意思や努力があってこその精神的苦痛なので、それがないと慰謝料は認められない場合があります。 つまり、婚姻関係が継続していると認められる期間の不貞行為は不法行為として認められますが、婚姻関係が既に破綻していると認められた以降の不貞行為については、慰謝料は認められないと思われます。

婚姻全期間を総合的に考慮・・・婚姻期間が長期に及び、一時的に不法行為期間があったとしても、それまでは円満で安定的な生活を送ってきたような場合には、婚姻全期間を総合的に考慮され、低額な慰謝料しか認められないこともあります。
また、長い婚姻生活において、配偶者に対する不信感や不満を募らせていき離婚に至った場合については、どちらか一方のみの責任とすることはできない場合が多い為、慰謝料は認められないと思います。 

不法行為に至った原因が不法行為を受けた側にある場合・・・不法行為に至った原因が、不法行為を受けた側にあるような場合には、慰謝料は認められない場合があります。 たとえば、夫から暴力を受けて治療を必要とするようになり精神的苦痛を受けたような場合でも、その暴力の原因が、妻による夫の両親への暴言がきっかけとなっているような場合には慰謝料は認められない場合があります。

慰謝料請求の時効・・・離婚の時、慰謝料を請求していない場合でも、離婚後に慰謝料を請求する事ができますが、慰謝料請求は離婚成立から3年の時効により消滅します。 離婚後に慰謝料について合意が得られず調停を申立てた場合、調停中に時効が成立し調停が不成立に終わっても、調停不成立から2週間以内に訴えを提起すれば、調停申立時に訴えがあったものとみなされますので、時効は成立しません。

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