内縁

「内縁」・・・婚姻届をしていない一組の男女が、婚姻の意思を持って共同生活を営んでいることをいいます。  よって、法律上の夫婦ではないため、民法の「婚姻」規定の保護対象外の夫婦関係となりますが、婚姻の規定を準用してその保護を図っています。

「重婚的内縁」・・・内縁には重婚的内縁というものがあります。 これは、内縁関係の当事者の一方又は両方が、既に法律上の配偶者がいる場合を指します。 「内縁」は、婚姻の意思を持って共同生活を営んでいるということなので、法律上の配偶者との夫婦関係は実質的に破綻し、形骸化していると言うことになります。

愛人、妾、不倫・・・「内縁」とは異なり、婚姻の意思を持っておらず、共同生活もしていない人または状態を指します。 また、愛人や妾は他方配偶者(夫又は妻)が承知しているのに対し、不倫は他方配偶者(夫又は妻)に内緒で関係をもっている状態を言います。

内縁 重婚的内縁 事実婚 愛人・妾 不倫
当事者の関係 共同生活の有無 なし なし
婚姻意思の有無 法律婚は望まない なし なし
当事者に既に配偶者がいる場合の
法律婚の状態
形骸化 外形的平穏 外形的平穏
又は懐疑的

内縁の成立要件

 「内縁」は婚姻届をしていない共同生活関係ですが、「内縁」が成立していると認められるためには、当事者間に①婚姻の意思があり(婚姻届出をする意思までは要求しない)、②共同生活関係にあることが必要となります。 「婚約」も「婚姻の意思があり夫婦として共同生活を営む意思」は求められますが、「内縁」は、実態として夫婦の共同生活の継続性が求められます。 その他、③性的関係の継続性、④妊娠の有無、⑤家族や第3者への周知、⑥婚礼等儀式の有無などの実態を総合的に評価して「内縁」が成立しているかどうか判断されますので、婚礼等儀式をしていないことのみで内縁を認めないとか、共同生活が短いというだけで内縁を認めないというものではありません。  法律婚との違いは、婚姻届の有無にあり、実体は法律婚と同じ夫婦共同生活関係となります。

法律婚 婚約 内縁
当事者の関係 婚姻の意思
共同生活 任意
婚姻届出の有無 なし なし

重婚的内縁の成立要件

 上記「内縁」と同様の要件が必要となりますが、当事者には法律婚上の配偶者の存在があるので、この配偶者との関係が問題となります。  「内縁」の成立要件として、内縁当事者の夫婦共同生活の継続性があるので、法律婚上の配偶者とは別居状態にあることが想定されます。  つまり、法律婚上の配偶者とは実体として夫婦関係になく、事実上の離婚の状態にあるということになります。  夫婦としての実体がない法律婚より、夫婦として実体がある「内縁」を法的に保護しようというのが法の立場です。

法律上の夫だからとか妻だからとかの理由で、夫婦の同居、協力、相互扶助の努力を怠ると、法的にも夫婦として認めてもらえなくなりますので注意が必要です。

内縁の法的保護

 上記の内縁の成立要件に基づいて「内縁」が認められる場合には、「内縁」関係にある男女には夫婦共同生活の実体があるため、以下の民法の婚姻に関する規定が準用され法的保護の対象となります。

・夫婦同居・協力・扶助義務・・・夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
・婚姻費用の分担・・・夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

不当な内縁解消・・・正当な理由のない一方的な内縁解消については、その不公平や不利益を救済するため、「婚約」同様に「婚姻の予約」があったものと捉えて「婚約予約不履行責任」や法的保護の侵害として「不法行為責任」の損害賠償を認める場合があります。

扶養・婚姻費用分担・・・夫婦共同生活の中で、相互に扶養したり、婚姻費用の分担が求められていますので、それをしない場合は、婚姻費用分担請求が認められる場合があります。

内縁解消の財産分与・・・内縁を解消するについては、夫婦としての実体がある以上、離婚の場合と同様に財産分与を認めています。 また、一方に経済能力があり、他方に扶養が必要な場合には、解消後の扶養給付を認める場合もあります。

内縁の相続と社会保障給付

 内縁配偶者の一方が死亡した場合、次のような問題があります。

内縁配偶者には相続権はありません。・・・内縁の一方が死亡したときは、他方の内縁配偶者には相続権がありません。  一方、どのように法律婚が形骸化していても法律婚の配偶者には相続権があります。  相続人がいない場合には、生計を同じくしていた者の請求により相続財産の一部又は全部を与えることができるとされています。

財産分与・・・内縁夫婦の一方が死亡した場合、普通には財産分与を受けることはできません。 死亡による内縁関係中に共に協力して得た財産がある場合は、裁判所に財産分与を申し立て、内縁夫婦の共有財産として一定の寄与・貢献度があると認められなければ財産分与を受けることはできません。

生前贈与、遺言・・・上記のように内縁配偶者には相続権がなく、財産分与も裁判所で認められなければ受けられないので、残された生存内縁配偶者が生活に困窮することのないように、生前贈与や遺言によって一定の財産を保障しておく必要があります。 ただし、注意しなければならないことがあります。 この生前贈与や遺言が、内縁関係を維持継続するためにされたような場合には、公序良俗に反して無効とされることがあります。 「死んだら財産をあげるから内縁関係を続けてくれ」とか「内縁関係を続けるから遺言書で財産を分けてくれ」などというのは認められないのです。 「内縁」は、法律上の夫婦ではないけれど、婚姻の意思を持つ男女の共同生活を認め保護してあげようというものなので、そのようなことは認められないのです。 生前贈与や遺言は書面にしておく必要がありますが、不動産の権利書・実印を預かっていたり、託されていた場合には、贈与契約があったものと認められることがあります。

社会保障給付・・・労災保険法の遺族補償年金、厚生年金法の遺族厚生年金などの社会保障は、内縁の配偶者も対象となります。  ただし、法律婚の配偶者がいる場合の重婚的内縁の場合は、法律婚の実体と内縁の実体を厳格に審査され、特に法律婚の実体が、①離婚の合意に基づき夫婦の共同生活を廃止しているが離婚届をしていない、②一方の悪意によって共同生活が行われていない場合で、その状態が概ね10年以上長期間継続し、別居し、経済的依存関係や音信・訪問などの事実が反復して存在しないような生活関係が固定していると認められるような法律婚の破綻が要件となり、その要件を満たすと認定されれば、内縁の配偶者に給付されることになります。 

事実婚

 「内縁」と同様、婚姻関係にない男女の共同生活関係となりますので、法律上は「内縁」と同義ですが、夫婦の婚姻に対する考え方や価値観が内縁とは異なります。
「事実婚」は、「法律婚」による相互扶助義務などの婚姻による各種権利義務の発生、夫婦同一姓、相続問題、夫婦関係が破綻した場合の離婚手続など法的な規制や保護をあえて避け、自由で束縛のない男女関係をもとめるもので、「内縁」と比較するとドライな関係といえます。

中高年者の事実婚・・・婚姻という社会のシステムとして組み込まれるのを避けて、ドライな関係を望む若者だけでなく、法律婚の法的権利・義務の発生を避け事実婚の機能面を利用して、配偶者を亡くした中高年者が、近い将来の相続の問題や子との家族関係などに配慮して、異性と共に暮らすために事実婚を選択することがあるようです。

近親者・親族間の事実婚・・・法律婚には婚姻障害事由があり、一定の近親者や親族との婚姻は優生学的・倫理的に制限を受けますが、法律上の婚姻ではない事実婚の場合には、婚姻障害事由を考慮する必要はなくなります。

同性愛者の事実婚・・・日本の法律では同姓の法律婚は許されませんので、法律の枠外にある事実婚を選択するしかありません。 スウェーデン、デンマーク、フランス、イギリスなど同性婚を認め、婚姻同等の権利を認めている国もあります。

法律婚と事実婚の違い

 「法律婚」が法律による夫婦関係であるのに対し、「事実婚」は契約や合意による夫婦関係ともいえます。  この事実婚を保護する場合には、内縁のように婚姻の規定を準用して保護を図ったり、契約に基づき救済を図ることになりますが、限界があることは拒めません。  「法律婚」と「事実婚」では以下のような違いがあります。

法律婚 事実婚
夫婦 同居 義務 任意
共同生活費用 分担義務 任意
貞操 義務 任意・・・男女間のモラルとしての責任
相続権 有り なし
氏(姓) 同一姓/強制 別姓のまま
戸籍 一方戸籍へ入籍 戸籍変動なし
子の身分 嫡出子:筆頭者戸籍へ入籍 非嫡出子:母の氏を称し母の戸籍へ入籍
父の認知→家庭裁判所許可により
父の氏を称し父戸籍へ入籍
子の親権 夫婦共同行使 単独行使・・・母親
父は認知により協議で親権者となる
親族 姻族関係 発生 発生しない
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