婚姻

婚姻の実質的要件・・・当事者の婚姻する意思の存在が要件となり、夫婦として経済的・性的・精神的な共同生活を営もうとする意思の存在が必要です。 また、この意思は、婚姻届書作成時及び婚姻届時に存在しなければならないとされています。

婚姻の形式的要件・・・日本では「届出婚主義」を採用しており、婚姻を成立させるには、市区町村役場に婚姻の届出をしなければなりません。  届出がされると「婚姻障害事由」がないか審査され、審査をパスして受理されると婚姻が成立します。  これは「創設的届出」といい、届出することにより「婚姻」という身分関係が形成され効力が発生します。  外国でその国の方式により婚姻を成立させた場合にも、戸籍への記載が必要となりますので、婚姻の届出が必要ですが、この場合には、既に婚姻が有効に成立していますので「報告的届出」となります。

一方が勝手にした婚姻届・・・他方の同意なしに無断で婚姻届をしたり、第3者が勝手にした婚姻届は「無効」です。 「無効」の場合には初めから婚姻はなかったものとされます。 下記の「婚姻障害事由」に該当している婚姻届が誤って受理された場合は、一旦は「有効」に成立したとしても「取り消しできる」ものです。

婚姻障害事由

 当事者に婚姻する意思があり、婚姻届をして法律上の婚姻を成立させようとしても、以下のような場合には、優生学的及び倫理的な理由により婚姻が禁止されています。誤って受理された場合は取り消すことができます。

婚姻適齢・・・男は満18歳、女は満16歳にならなければ婚姻することはできません。

重婚禁止・・・日本は一夫一妻制ですから、配偶者のある者は重ねて婚姻することはできません。

再婚禁止期間・・・女性は、前婚解消又は取消から6ヶ月過ぎなければ再婚できません。 前婚解消又は取消前から懐胎している場合は、その出産日から再婚できます。

近親者間の婚姻禁止
・祖父母→父母→子→孫と親子でたどれる者(直系血族間)との婚姻はできません。
・兄弟姉妹・おいめい・おじおば(3親等内の傍系血族間)との婚姻はできません。
・兄弟姉妹間で片親が違う場合の兄弟姉妹間も婚姻できません。
・[養子] と [養親の実子で養子の兄弟となった者]、[養子] と [養親の兄弟姉妹で養子のおじおばとなった者]、[養子] と [養親の実子の子で養子のおいめいとなった者](傍系血族)との間では婚姻できます。
・特別養子縁組によって実親との親族関係が終了した後でも、法律上の関係が終了しただけで自然血縁関係はあるので前記同様の関係の者は婚姻できません。

直系姻族間の婚姻禁止・・・配偶者の祖父母、父母(直系姻族)との婚姻はできません。 配偶者と離婚したり、死別して姻族関係を終了していても婚姻できません。 この禁止規定は、親子秩序や性秩序の侵害という倫理上の理由によるものです。

養親子等の間の婚姻の禁止
・[養子・養子の配偶者・養子の直系卑属・養子の直系卑属の配偶者] と [養親・養親の直系尊属] 間では婚姻はできず、離縁によって親族関係が終了しても婚姻はできません。
・[養子縁組前に生まれていた養子の子] と [養親・養親の直系尊属] 間は婚姻することができます。

<参照リンク:結婚できない親族の図>

未成年者の婚姻 = 成年擬制

父母の同意・・・婚姻適齢に該当していれば婚姻できますが、成年(20歳)に達していない場合は、父母による同意が必要となります。  父母の一方が同意しない場合や行方不明・死亡、又は意思能力を欠いて意思表示することができない場合は、他の一方の同意があればよく、父母両方が死亡している、又は意思能力を欠いて意思表示することができない場合は、同意は不要です。

成年擬制・・・未成年者が婚姻すると、民法や商法などの私法上は成年として扱われます。  これを「成年擬制」といいます。  「私法上」とは、個人と個人との関係を規定する法律上という意味で、売買や賃貸借契約などの取引行為は親権者の同意を得なくても単独ででき、婚姻をして家庭をもつ以上、ある程度は自立した生活ができないと困るのでこのような規定をおいています。  しかし、個人と国との関係を規定する公法上の選挙権はありませんし、刑事法上の規制による飲酒・喫煙ができるわけではありません。
※ 婚姻無効の場合は、初めから婚姻がなかったことになるので成年擬制の適用はありません。 婚姻適齢にない場合の婚姻取消についても成年擬制の適用はありません。

未成年の離婚・再婚・・・20歳になる前に婚姻し、離婚又は死別した場合、さらには婚姻適齢以外の事由により婚姻が取り消された場合でも、一旦「成年擬制」されるとそのまま成年として扱われます。  再婚には父母の同意は不要となります。  

婚姻することによって発生する権利・義務と身分変動

 夫婦は、経済的・性的・精神的な共同生活を営もうとする意思により結合された一組の男女であることから、民法では法律婚による夫婦について、同居の義務、夫婦共同生活費用の分担義務、貞操義務などを規定しています。

同居義務・・・単身赴任などにより別居することに合意があったり、DVなどにより別居せざるを得ないような事情がある場合には、別居もやむを得ないことになりますが、正当な理由がなく一方的に同居することを拒否しているような場合には、離婚原因として認められます。

夫婦共同生活費用の分担義務・・・扶養義務には「生活保持義務」と「生活扶助義務」の2種類のものがあり、夫婦間及びその子への扶養義務は「生活保持義務」で、自分と同水準の生活をさせる義務があります。 また、この扶養義務は当然の扶養義務なので、夫婦は最も強力な扶養義務を相互に負っています。 よって、正当な理由がないのに生活費を渡さない場合や家を追い出す行為は認められません。

貞操義務・・・夫婦が性的結合体である以上、配偶者以外の者との性的関係をもつことは許されず、「配偶者の不貞な行為」は離婚が認められる理由となっていますし、不貞行為をした配偶者に対して貞操義務違反として債務不履行責任及び不貞の相手方に対しても不法行為責任により損害賠償も認められます。  ただし、この貞操義務違反は、保護すべき夫婦関係がある場合のことで、夫婦関係が既に破綻しているような場合の不貞行為については、不貞をした配偶者の貞操義務違反及び不貞の相手方の不法行為責任に対する損害賠償は認められない場合があります。

相続権の発生・・・夫又は妻を亡くした場合、残された配偶者は常に相続人となります。 相続は、死亡した人の子・両親・兄弟姉妹がなく、配偶者のみの場合は配偶者がすべての遺産を相続し、子がいれば遺産の1/2を、子がなく両親がいれば遺産の2/3を、子・両親がなく兄弟姉妹がいれば遺産の3/4を配偶者が相続する法定相続分が民法に規定されています。

夫婦同一姓、新戸籍編成・・・婚姻届により、夫婦は婚姻の際に定めるどちらか一方の氏を称し、新戸籍が編成され、氏を改めた者は他方の戸籍に入籍することになります。  多くの場合、妻は夫の氏を称し、夫を筆頭者とする戸籍へ入籍します。  氏名は個人の人格や尊重の基礎であるとして、強制的に改氏することについて批判があり、夫婦別氏制導入の動きが見られますが、現状ではまだ導入されていません。

子の親権者となり養育監護義務が発生・・・婚姻中に懐胎した子は夫婦の子とされ、夫婦共同で親権者となり養育監護義務が発生します。

姻族関係の発生・・・婚姻すると配偶者の親・兄弟姉妹などの親族と姻族関係が発生します。  姻族関係になると、生活扶助義務(家庭裁判所の審判による)が発生しますが、離婚することによって当然に姻族関係は終了します。  配偶者が死亡した場合は姻族関係は当然に終了せず、姻族関係の終了届をすることにより終了します。

<参照リンク:親族の扶養範囲>

夫婦の契約

 夫婦における契約は、民法に規定をおいています。
民法754条:「夫婦でした契約は、婚姻中いつでも、夫婦の一方から取り消すことができる。」  この規定は、流動的な夫婦の共同生活の中で、柔軟性をもたせるため、夫婦間の契約を無条件に取り消しできるようにしたのですが、夫婦間に紛争が生じた場合には、一方配偶者の逃げ道となり、権利の乱用となってしまうことから、現在ではこの規定は、存在意義が乏しいと考えられ以下のように解釈されています。

「婚姻中」とは・・・条文の「婚姻中」という解釈において、「婚姻が実質的に継続していて、夫婦関係が破綻していないような状態」とされています。  夫婦仲がよい場合には、そもそもこのような契約をする必要もないし、契約したとしても一方的に取り消すことはなく、話し合いによって解決できます。 しかし、夫婦仲が悪くなったような場合には、一方的に取り消すことが不当な結果を招くことが多いので、次のように解釈されます。
「夫婦の契約は、婚姻関係が実質的に継続し、破綻するおそれがないような場合には、いつでも、常に一方的取り消すことができるが、夫婦関係が実質的に形骸化していたり、夫婦関係が破綻している又は破綻するおそれがあるような場合の一方的な取消は権利の乱用となり、一方的に取り消すことはできない。」ということになります。

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