認知症について

 人は加齢と共に様々な精神的・肉体的な機能障がいを生じます。 認知症は脳の機能障害により発症する病で、徐々に進行する認知症の場合は、家族や周囲の者がそれとは気づかず、単に老化による「もの忘れ」と考えてしまうため、当然の日常生活活動ができなかったり、約束事や頼んでおいたことをしていないと、周囲の者が嫌悪感をいだき、家族関係を悪化させ、さらには高齢者への虐待へとつながっていくこともあります。  「何で言っておいた事ができないの? この前そう言ったでしょ。 さっき言ったばっかりじゃない、まだできないの。 もう、知らない。」などとなってしまうのです。

認知症という病に対する認識と理解
歩行困難な身体に障がいを持つ人に、「立って歩きなさい」という人はいません。 脳に障がいを持つ小学生くらいの知能の人が、連立方程式を解くとは誰も思いません。  同様に、認知症という病があるという認識とその病はどういうものかを理解している人は、認知症の人が健常者と同じように物事をスムーズに処理できるとは思わないはずです。  家族や周囲の者が、認知症という病気にかかっているとも知らず、単に老化による「もの忘れ」と思っているから、家族関係を悪化させたり、虐待へと発展してしまうのです。 最も大切なのは、高齢者と共に暮らす家族は、「認知症という病である」という認識と「認知症」に対する理解が必要です。

認知症高齢者と後見人
認知症高齢者の身上監護をする場合、専門的には医師や介護する人との相談・連携を図りながら治療や介護方法などを考えて見守っていきますが、後見人となった人は、認知症について、ある程度の理解をしていなければなりません。 また、周囲の人たちや家族の理解や協力も必要となります。    

認知症の症状

 認知症の症状には、「中核症状」と「周辺症状」があります。
中核症状とは、認知症患者に共通した機能障害で、脳の神経細胞が壊れることを起因として起こる病状です。

周辺症状とは、脳神経細胞が壊れる中核症状を要因として現れる精神症状や異常行動で、個人の環境、心理状態、身体状況、個性、気質などにより影響されます。 よって、各自異なる症状が現れます。

例えが悪いかもしれませんが、腕を骨折した人は、骨が折れるという病気ですが、骨が折れたことにより腕が使えなくなり、健常者のように腕を伸ばしたり曲げたりすることができなくなります。(中核症状)  しかし、腕の問題だけでなく、体を自由に動かすことに支障を生じ、走ったり、上体を動かすような運動をすると腕が痛んで健常者と同じようには物事の処理ができなくなります。(周辺症状)

認知症の中核症状

 認知症の中核症状とは、脳の神経細胞が壊れることを起因として起こる病状で、次のような症状が現れます。

○ 記憶障害・・・新しいことから忘れる特徴があり、昔の記憶ははっきりしているのに、新しいことを忘れるので、物事を記憶することが苦手になります。  老化による「もの忘れ」と認知症による「記憶障害」は、次のような違いがあります。

老化による「もの忘れ」 認知症による「記憶障害」
・体験の一部を忘れる。
朝ご飯に何を食べたかを忘れている。
・忘れたことの自覚がある。
時々探し物をする。
探し物も努力して見つけようとする。
・極めて徐々にしか進行しない。
昔活躍した俳優の名が思い出せない。
・たまに同じことを言う。
・体験そのものを忘れる。
朝ご飯を食べたこと自体を忘れる。
・忘れたことの自覚がない。
いつも探し物をしている。
探し物も誰かが盗ったということがある。
・進行性である。
日頃やってきた料理の段取りを忘れる。
・いつも同じことを言ったり聞いたりする。

○ 判断力の障害・・・寒くても薄着だったり、暑くてもセーターを着るなど暑さ・寒さに対して着る物が変わらなかったり、糖尿病や高血圧症の食事制限をしなければならないことを解っていても、目の前のまんじゅうや塩辛を食べてよいかどうか解らず、筋道を立てて考えることができず、判断能力が低下する。
○ 問題解決能力の障害・・・一度に処理できる情報量が減り、2つ以上のことが重なると処理できなくなる。 予想外のことがあると混乱してしまう。
○ 実行機能障害・・・計画を立てたり、手順を考えたりすることができず、料理をつくるために買ってきた食材を冷蔵庫にしまっておいて、いざ作るときには近くにある目についた別の食材を使って調理する。
○ 見当識障害・・・季節・日時・場所・人物を認識する能力がなくなり、季節や今日の日付が解らなかったり、慣れた道でも迷ったり、病状が進行し過去の記憶を失うと息子や娘が解らなくなり、息子を叔父さんと呼んだりする。
○ 失行・失認・失語・・・失行とは、ボタンをかけ間違えて着るなど動作を組み合わせてすることができなくなること。 失認とは、鍋やまな板などの使い方が解らなくなること。 失語とは、ものの名称が解らなくなること。

認知症の周辺症状

 認知症の周辺症状は、脳神経が壊れる中核症状を要因として現れる現象で、個人的な環境・気質・個性などの影響を受けて精神症状・異常行動となって現れます。 住まいの環境、家族や周囲の接し方などの環境改善・整備により改善されたりします。

せん妄・・・軽度の意識障害。 興奮やぼんやりを繰り返すなどの興奮や幻覚などの症状を伴う。

妄想・・・記憶障害・判断力障害により自分の欲求を満たされないストレスにより周囲の人を攻撃したり、日常の失敗を非難されることによる自己防衛が働き、身近な人に対して疑い深くなったりする。 また、幻覚を見たりする。

異食・過食・・・脳機能の障害により満腹中枢が機能しなくなり満腹感がなくなったり、食べ物の認知ができなくなり何でも口にする。

抑うつ・・・加齢に伴う身体的・心理的・社会的な能力の衰えがストレスとなり、さらに、日常生活機能の低下により精神機能が弱くなりうつ症状となる。 また、友人や配偶者との死別などによる孤立感などもうつ症状につながる。

仮性作業・・・本人には意味のないことという認識はないが、意味のない動作を繰り返す。 認知症が重度になる程単純動作となる。 

徘徊・・・何の目的もなく歩き回る。  見当識障害・記憶障害・認知障害などと関連して起こり、実際には何らかの理由により歩き回るのだが、それを説明できなかったり、当初の目的を忘れてしまっている。

不潔行為・・・認知力の低下により便をもてあそんだり、場所に関する見当識障害によりトイレの場所が解らず、トイレ以外で放尿してしまう。

三大認知症

 「アルツハイマー型認知症」、「脳血管性認知症」、「レビー小体型認知症」は、三大認知症といわれ、認知症の約9割を占めるといわれています。  さらに、「ピック病」を含めて四大認知症といわれることがあります。   認知症は1つを発症するとは限らず、複合的に発症することもあり、認知症に関する医学は発展途上で、これらを完治する治療方法は確立されていません。

アルツハイマー型認知症・・・認知症全体の約6割を占め、最も知名度の高い認知症です。 徐々に病状が進行し、言語障害や身体的機能障がいは少なく、記憶障害が強いので、初期段階においては、家族や周囲の人たちは単に老化による「もの忘れ」程度に考えてしまいます。 脳神経細胞が破壊され、脳が萎縮するので、最期は自律神経の停止により死に至ります。

脳血管性認知症・・・認知症全体の約2割を占め、脳の血管が詰まったり、破れたりすることにより脳の組織が壊れることにより発症します。 脳卒中の後遺症や脳梗塞により発症するといわれており、突然に発症し、段階的に悪化します。 高血圧や糖尿病を合併しやすく、言語障害や身体機能の障がいが多く、認知の障がいは時間帯や日によって症状の変動があります。

レビー小体型認知症・・・初期に幻覚が現れ、次第にもの忘れをするようになり、運動機能障害も併発するのが特徴で、1日のうちで変動が激しいのが特徴です。

ピック病・・・40歳~60歳に多く、怒りっぽくなる、人を馬鹿する、人を無視する、嘘をつく、相手の話を聞かず一方的な会話などの人格の変化が初期に見られます。 また、過食、異食、徘徊、放浪、窃盗、他人の家に勝手にあがるなどの異常行動や反社会的行動が見られ、最期は失語となり衰弱して死亡することが多い。 

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